【社労士が解説】有給休暇義務化を始めるなら「計画的付与制度」も活用しましょう

2019年09月14日

労働基準法の改正により2019年4月から、年次有給休暇のうち5日については、雇う側が休むように促し、日を決めて休ませなければならないようになりました(※参考記事)。
この法律改正に向けた対応策のひとつとして挙げられるのが「計画的付与制度」の導入です。本記事では、計画的付与制度のあらましと導入方法についてご紹介します。

【(※)参考記事】有給休暇義務化にむけて押さえておくべきポイントとは?

年次有給休暇の「計画的付与制度」とは?

2019年から「有給休暇の義務化」に対する対応策のひとつとして挙げられるのが、「計画的付与制度」の導入です。計画的付与制度とは、労使協定を結べば、年次有給休暇のうち5日を除いた残りの日数分について、雇う側が取得日をあらかじめ決めて休ませることができる制度です。

「5日を除いた残りの日数分」というのが少し複雑に聞こえますが、たとえば、以下の図のように、有給が10日付与されている人には、「5日」を残して「5日」、有給が20日付与されている人には、「5日」を残して「15日」が、計画的付与に使える有給の日数となります。

有給すべてを雇う側で計画的に指定すると、病気や子どもの行事で休みたい時に有給が使えなくなってしまいます。そうなると、働く側への恩恵が少なくなるため、「5日」は個人の裁量分として残すことが法律で定められているのです。

有給休暇の計画的付与制度例

つまり、個人が自由に取得できる分として「5日」を残せば、雇う側が有給の日程を決めて与えることは法律上認められているということです。この制度を、「計画的付与制度」と呼んでいます。

ちなみに、「計画的付与制度」を導入している企業のほうが、導入していない企業よりも有給取得率が8.6%も高いという調査結果(平成20年)が出ています。この結果をうけてか、有給取得率を上げたい政府は、計画的付与制度の活用を積極的に推進しています。

では、この「計画的付与制度」、具体的にどのように導入すればよいのでしょうか。活用例と導入方法について、以下でご紹介します。

【活用例①】全員同じタイミングで休む「一斉付与」

「一斉付与」は、全従業員同じタイミングで休みを付与する方法です。

たとえば、会社の創立記念日を全員一律の休みにしたり、夏季休暇や冬季休暇前後の平日5日間を休業日として全員休みにしたりと、企業全体あるいは事業所全体で稼働を止め、全員を休ませる方法のことを言います。

一斉付与は、個別で休むより全体の稼働をストップした方が効率的な組織や、閑散期が明確にあって、その間稼働を止めても支障がない組織に導入されていることが多いです。

例をあげるなら、操業をストップさせる方が効率的な製造工場、あるいは年末年始の一般企業などでしょうか。業種によりますが、年末年始は取引先が休みで仕事が少ないため、有給の計画付与日に指定しやすいと言えます。

一斉付与を行う場合の注意点は、有給がまだ付与されていない人の対応です。会社都合の休業日となるので、考えられる対応策としては、(1)「特別休暇を付与する」あるいは、(2)「休業手当として賃金の60%を支払う」の2パターン。(2)はあまり現実的ではないので、大半は(1)の方法をとることになるでしょう。この対応方法について、事前に決めておく必要があります。

【活用例②】グループに分かれ順番に休む「交替制付与」

「交替制付与」は、グループやチーム別に交替で休みを付与する方法です。

たとえば、夏季休暇で交替制付与を使う場合なら、AグループとBグループに分かれ、Aグループは前半の8/13(月)~8/17(金)までを休みに、Bグループは後半の8/20(月)~8/24(金)までを休みにします。そうすることで、運営をストップすることなく全員に休みを振り分けることができます。

交替制付与は、稼働をストップできない病院や公共交通機関(電車・バスなど)、物流、常時営業のコンビニやスーパーなどに導入されていることが多いです。

【活用例③】個人毎に休みを振り分ける「個人別付与」

「個人別付与」は、個人毎に休みを付与する方法です。個人の希望を聞いたうえで雇う側が休みを決めます。

たとえば、夏季休暇で個人別付与を使う場合なら、Aさんは8/13(月)と14(火)、Bさんは8/20(月)と23(木)、Cさんは8/24(金)と27(月)という風に個別に決めていきます。少し手間がかかりますが、一斉付与も交替制付与もなじまない場合や、個人の希望を最優先したい場合には、個人別付与を選択するとよいでしょう。

最近では、誕生日や結婚記念日などに「アニバーサリー休暇」と称して連休取得を促すケースも多いようです。こういった記念日は日程が確定しているため、計画的付与に使いやすいという特徴があります。

「計画的付与制度」の導入には、「就業規則での定め」と「労使協定の締結」が必要

年次有給休暇の「計画的付与制度」を導入する場合、事前に2つすべきことがあります。1つ目は、就業規則で規定すること。2つ目は、労使協定を締結することです。難しそうに聞こえますが、手続きは至ってシンプル。以下で方法をご紹介しますので、参考にしてください。

就業規則で定める

就業規則に、以下のような計画的付与に関する内容の定めを加えます。

5日を超えて付与した年次有給休暇については、従業員の過半数を代表する者との間に協定を締結したときは、その労使協定に定める時季に計画的に取得させるものとする

▼就業規則のサンプル
年次有給休暇の計画付与に関する就業規則の規定例

労使協定を締結する(届出は不要)

就業規則を変更したうえで、労使協定を締結します。36協定のように、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要はありませんが、労使協定なので書面に残す必要があります。

【労使協定で定める項目】
(1) 対象者(対象から除外する人がいる場合)
(2) 対象とする年次有給休暇の日数
(3) 計画的付与の具体的な方法
 ・ 一斉付与の場合、具体的な付与日
 ・ 交替制付与の場合、グループ別の具体的な付与日
 ・ 個人別付与の場合、個人別の取得計画表を作成する時期と手続き方法
(4) 対象となる年次有給休暇を持たないものの扱い(一斉付与の場合)
 ⇒ 有給ゼロの人をどうするかについて以下2パターンから定めます。
  ・ 特別休暇を設ける
  ・ 休業手当として賃金の60%を支払う
(5) 計画的付与日の変更
 ・ 計画的付与日を変更する場合、どんな手続きにするかを定めます。

▼労使協定のサンプル
年次有給休暇の計画付与に関する労使協定例【参考】厚生労働省「年次有給休暇の計画的付与と取得について」

まとめ

以上、計画的付与制度のあらましと導入方法についてご紹介しました。
自由に使える5日を残しておけば、有給休暇の取得日を雇う側であらかじめ決めることができる「計画的付与制度」。働く側からすると、「勝手に日程を決められるのは嫌だ」という意見も出てきそうですが、個人任せにすると有給取得率が高まらないのもまた現実。取得を促進するという意味を込めて、計画的付与制度を導入するのも一つの手かもしれません。

林 和歌子
大学卒業後、人材サービス大手で約12年間勤務。主に企業の採用活動に携わる。採用という入口だけではなく、その後の働き方にも領域を広げたいとの思いで独立。現在、採用支援を手がける傍ら、働き方に関するコンテンツなども執筆しています。京都大学文学部卒業(社会学専攻)。2015年、社会保険労務士の資格取得。
2019年09月14日