【数字から読み解く】有給休暇年5日の取得義務化から3年以上が経過–「有休取得率」はどう変化したのか?取得率の高い属性は?

2019年4月に施行された「働き方改革関連法」。複数の施策が同時にスタートしましたが、なかでも大きな注目を集めたのが、有給休暇年5日の取得義務化でした。施行から3年以上を経て、有休の取得状況はどう変化したのか。本記事では、リクルートワークス研究所による「全国就業実態パネル調査(以下「パネル調査」)」をもとに、働き方改革前後の有休取得率の変化や、有休取得率の高い属性・低い属性を追います。

有休取得率は上昇傾向――2021年は、100%取得が「22.3%」

まず、働き方改革が開始した2019年4月前後で、企業で働く人たちの有休取得状況が、どのように変化したのかを見ます。図①は、パネル調査より「会社・団体等に雇われていた」人のみに絞って、有休取得状況の変化をまとめたものです。「すべて取得できた(取得率100%)」は、2018年において「19.2%」と20%を切っている状況でしたが、2019年に20%を突破。2020年以降は22%まで上昇し、現在、横這いを維持しています。

図①

図②は、図①を視覚的に見やすいようにグラフ化したものです。

図②

「取得率50%(おおよそ半分は取得できた)」のラインに注目すると、2018年においては約50%でしたが、2022年には60%付近まで上昇。2018年から2021年の約3年間で、10%程度も伸長したことが分かります。

このことから、有給休暇年5日の取得義務化がはじまって以降、着実に有休取得率が向上したことが分かります。「努力義務」ではなく「義務」化という強制力の強い施策が、社会に緩やかながらも変化を起こしていると言えるでしょう。

有休取得率×性別――男女を比較すると、取得率100%は女性のほうが多め

有休取得率について、もう少し深く掘り下げてみたいと思います。同じくリクルートワークス研究所のパネル調査(2021年の調査結果)より、有休取得率と性別の関係性を見てみましょう。図③は、「会社・団体等に雇われていた」人のみに絞ったうえで、男女別の有休取得率を抽出しました。

このデータを見ると、男性は「すべて取得できた(100%)」と「おおむね取得できた(75%程度)」の比率が高く、両者を合計すると4割以上になります。女性も同様に「すべて取得できた(100%)」がもっとも高い割合を示し、次いで「おおむね取得できた(75%程度)」「有給休暇はない(付与されていない)」と続きます。

図③

図④は、図③をグラフにしたもの。図④を見ると、黄色い部分(「有給休暇はない(付与されていない)」)の男女の開きが大きいことが分かります。男女間で、およそ8%の開きが存在しています。この点から、同じ被雇用者であっても、女性の多くが、有休の付与条件を満たさない短時間労働、あるいは短期間労働に就いていることが推測できます。

図④

有休取得率×雇用形態――雇用形態で比較すると「派遣社員」「契約社員」の取得率が高い

有休取得率と雇用形態の関係も見てみましょう。同じくパネル調査(2021年の調査結果)より、雇用形態別で有休取得率を抽出したものが図⑤、雇用形態「その他」を除いて、グラフ化したものが図⑥です。

図⑤

図⑥

上記の図で注目したい点は、「すべて取得できた(取得率100%)」の比率がもっとも高い雇用形態が「派遣社員」(32.80%)となっており、次いで「契約社員」(28%)が高い比率を示していること。「正社員」の20%と比較して、「派遣社員」は約12%も高いことが分かります。背景には、正社員は勤続年数が長い人が多いため、有休付与日数が多く、同じ日数を取得しても、比率が低く出ることも挙げられますが、同時に責任範囲の大きな「正社員」のほうが、他の雇用形態よりも休みづらい現状もあるのかもしれません。

もう1点、「有休取得率50%(おおよそ半分は取得できた)」のラインを見てみましょう。「正社員」「嘱託」「派遣社員」は6割前後ですが、契約社員は7割と約10%も高いことが分かります。このことから、雇用形態別に見ると「契約社員」が積極的に有休を取得している状況がうかがえます。

有休取得率×従業員規模――従業員規模が大きいほど、有休取得率は高い

続いて、有休取得率と従業員規模についても追ってみたいと思います。パネル調査(2021年の調査結果)を基に、従業員規模別で有休取得率を抽出したものが図⑦です。

図⑦

見やすくグラフ化すると、図⑧のようになります。

図⑧

ここから分かることは、従業員規模が大きいほど、有休取得率も高くなるということ。従業員数:1000人以上の企業だと、100%取得している人が27%強なのに対して、9人以下の企業だと15%程度にとどまり、約12%の差が生じています。従業員規模が大きくなるにつれ、取得率が高まっているため、従業員規模と取得率の関連性は高いことが分かります。

背景には、規模の大きな企業のほうが、同様の業務を担当する人数が多く、代わってもらいやすいため、有休も取りやすいという事情があるのかもしれません。一方、従業員数9人以下の企業は、有給休暇なしの比率が4割以上にものぼっています。まだ、伸びしろが大きいと言えます。

有休取得率×満足度――取得率が高いほど、休暇に対する満足度は上昇

有休取得率と従業員満足度の関連を見てみたいと思います。リクルートワークス研究所のパネル調査からは明らかにできないため、厚生労働省 労働基準局が公表している「年次有給休暇取得率と休暇に関する満足度」の調査データをお借りして、図⑨を作成しました。

図⑨

【参考】『年次有給休暇取得率と休暇に関する満足度』(厚生労働省)

この図から明確に分かるのは、有休取得率が高ければ高いほど、休暇に対する満足度も高まること。当然といえば当然ですが、ここで注目したいポイントが「どのラインで満足・不満足が逆転するのか」です。

「取得率:15%~30%未満」では、満足(44.4%)であるのに対して、不満(55.6%)なので、やや不満気味だと読み取れます。しかし、その上の「取得率:30%~50%未満」を見ると、満足(60.5%)であるのに対して、不満(39.5%)となっており逆転します。ですから、取得率30%~50%付近が、満足と不満の境界線だといえるのではないでしょうか。ただし、人の要求度は高まり続けることを考えれば、満足・不満の境界線は今後、もう少し上がっていくかもしれません。

さいごに

以上、有給休暇年5日の取得義務化から3年以上が経過した現在において、「有休の取得状況はどう変化しているのか」「有休取得率の高い属性・低い属性は何か」などを、具体的な数字をもとに紹介しました。順調に取得率は高まっているようですが、一方で思うように進んでいない属性もあるようです。「有休の取りやすさ」は、従業員の休暇に対する満足度の向上に寄与します。自社内に改善の余地があるようであれば、手をつけてみるのもよいかもしれません。

ライター:林 和歌子
大学卒業後、人材サービス大手で約12年間勤務。主に企業の採用活動に携わる。採用という入口だけではなく、その後の働き方にも領域を広げたいとの思いで独立。現在、採用支援を手がける傍ら、働き方に関するコンテンツなども執筆しています。京都大学文学部卒業(社会学専攻)。2015年、社会保険労務士の資格取得。
2022年12月10日