令和5年の厚労省雇用助成金について徹底解説

現在においても、まだまだ新型コロナウイルス感染症の社会に及ぼす影響は多大であり、事業活動の縮小などが余儀なくされています。
そのため、有期雇用労働者・短時間労働者・派遣労働者といったいわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成するものが展開されています。
また、厚労省より令和5年度概算要求の主要事項などが公表されたことにより、次年度の助成金に関する内容などについても公になりつつあります。
本記事では、厚労省や東京都などが展開しているさまざまな助成金について詳しく解説します。

令和5年度における厚労省予算概算要求の姿について

厚労省が財務省に対して要求している概算額は次のとおりです。

  • 令和4年度予算額:32兆6,304億円
  • 令和5年度要求額:33兆2,644億円
  • 対令和4年度増額:+6,340億円

このように、厚労省全体としても大規模な予算編成が行われており、令和4年度の予算額と比較しても数千億円単位で増額されていることが分かります。

令和5年度 厚生労働省予算概算要求における重点要求について

厚労省としては、コロナ禍からの経済社会活動の回復を見据えて国民の命・雇用・暮らしを守る万全の対応を行うとともに、全世代型社 会保障の構築を推進し、未来を切り拓く「新しい資本主義」を実現することにより、国民一人ひとりが豊かさを実感できる社会を構築するため、次の項目に重点的な要求を行うとしています。

  1. コロナ禍からの経済社会活動の回復を 支える保健・医療・介護の構築
  2. 成長と分配の好循環に向けた「人への投資」
  3. 安心できる暮らしと包摂社会の実現

このように、日本全体の社会情勢を考慮した重点的な予算要求がされていると言えます。

厚労省が予算編成している施策の内、キャリアアップ助成金などは「人への投資パッケージ」に含まれています。
また、令和5年度には新たに新設される助成金なども存在しています。
なお、予算規模としては令和4年度が1,019億円に対して令和5年度は1,101億円となっており、対前年度比では82億円の増額が概算要求に織り込まれています。
ここからは、人への投資パッケージに含まれているさまざまな助成金について詳しく解説します。

新設・拡充・廃止・縮小される内容について

1.両立支援金等助成金

介護離職防止支援コースが、令和4年度2.2億円に対して令和5年度は2.9億円に増額されています。
介護休業取得者の代替要員の新規雇用(派遣を含む)または代替する労働者への手当支給等を行い、かつ、休業取得者を原職等に復帰させた場合の業務代替支援加算や介護を申し出た労働者に対する個別周知及び仕事と介護を両立しやすい雇用環境整備を行った場合の個別周知・環境整備加算が新設されました。
業務代替支援加算としては、新規雇用:20万円・手当支給等:5万円となっています。
また、個別周知・環境整備加算としては15万円となっています。

2.働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)

本助成金は、令和5年度に新たに新設されたものとなっています。
令和6年4月には上限規制の猶予事業・業務への適用が予定されているところでありますが、これらの業種等については、特に建設業など一部の業種において 顕著な長時間労働の実態が認められるなど更なる支援が必要であるとし、各業種・業務について法規制が異なることから、各々の業種において成果目標を設けるものとしています。
対象業務は、建設事業・自動車運転の業務・医業に従事する医師・砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)となっており、36協定の上限が事実上存在しない業種が対象となっています。
なお、具体的な助成額は次のとおりです。

建設事業・自動車運転の業務

  • 月80時間以上 → 月60時間以下:250万円
  • 月80時間以上 → 月60~80時間:150万円
  • 月60~80時間 → 月60時間以下:200万円

医業に従事する医師

  • 月100時間以上 → 月80時間以下:250万円
  • 月90時間 → 月80時間以下:200万円
  • 月80時間以上 → 月80時間以下:150万円

3.キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金は、令和4年度268億円に対して令和5年度は268億円と同額となっています。
なお、次の点について変更があります。

  • 正社員化コース:加算変更
  • 障害者正社員化コース:加算変更
    加算変更としては、自発的能力開発および定額制訓練において有期採用から正規採用とすることでの助成金が、95,000円から110,000円と増額になっており、無期採用から正規採用とすることでの助成金が47,500円から55,000円と増額になっています。
  • 賃金規定等共通化コース:増額
    1事業所あたりの助成金が570,000円から600,000円に増額となっています。
  • 賞与退職金制度導入コース:増額
    支給額が380,000円から400,000円に増額となっており、同時に導入の場合の加算としては160,000円から168,000円に増額となっています。
  • 短時間労働者労働時間延長コース:増額
    支給額が225,000円から237,000円に増額となっており、3時間未満の延長では4.3万円から11.7万円となっています。
  • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース:廃止
    令和5年度では、本コースは廃止となっています。

なお、正社員化コースと賃金規定等改定コースについては、「生産性要件を満たしている場合に助成額を増額加算する」と定義づけられていることから、賃金規定等共通化コース・賞与退職金制度導入コース・選択的適用拡大導入時処遇改善コース・短時間労働者労働時間延長コースについては廃止される可能性が懸念されます。

また、東京都では東京都正規雇用等転換安定化支援助成金が展開されています。
キャリアアップ助成金(正社員化コース)の対象になった労働者であり、平成31年4月1日以降に東京都内事務所において正規雇用労働者へ転換等された労働者であることと支援期間(3か月)終了日において正規雇用労働者の状態が継続しており都内で継続して勤務していることを自要件としています。
これらに合致するのであれば、対象労働者数が1人では20万円・2人では40万円・3人では60万円の助成金が貰えます。

なお、東京都の東京都正規雇用等転換安定化支援助成金は、厚労省のキャリアアップ助成金に上乗せする形で申請することができますので、ご活用して頂きたいと思います。

4.業務改善助成金

業務改善助成金は、令和4年度12億円に対して令和5年度は32億円と増額となっています。
拡充内容としては、次のとおりです。

  • 助成対象事業場及び対象経費
    原材料費の高騰などの要因による経営悪化事業場を特例の対象として追加し、助成の対象となる経費を拡充
  • 助成率
    最低賃金額が相対的に低い地域の事業場に対して助成率を引上げ
  • 助成上限額
    助成上限額を引上げ

最低賃金の引き上げにより対象者の増加に伴い、来年度申請数が増える可能性があります。

5.産業雇用安定助成金(スキルアップ支援コース)

本助成金は、令和5年度に新たに新設されたものとなっています。
在籍型出向は、自社にはない実践の場における経験から新たなスキルを習得することが期待できるため、労働者のスキルアップを在籍型出向により行う場合に、労働者を送り出す事業主に対して助成することにより在籍型出向を推進し、企業活動を促進するものであり、 雇用機会の増大等雇用の安定を図ることを目的としています。
なお、具体的な助成額は次のとおりです。

  • 助成率:中小企業2/3、中小企業以外1/2
  • 上限額:8,355円/1人1日あたり
  • 支給対象期間:最長1年間
  • 支給対象人数:最大5人

まとめ

厚労省や東京都などが展開しているさまざまな助成金について詳しく解説しました。
国や地方自治体による次年度の予算算定とは、年度当初よりさまざまな実務処理が水面下で行われており、年度末に開催される国会や各自治体の議会において議決されることで予算が担保されます。

年度当初には次年度の概算要求の概要などが公表されていることから、それらを注視することで次年度にどのような助成金が展開されるのかを事前にリサーチすることが可能です。
さまざまな民間事業継続のため、国や自治体などの各種助成金を積極的に活用されることを強くおすすめします。

本記事が、厚労省や東京都などが展開しているさまざまな助成金について検討されている方にとって一助となったのであれば幸いです。

2022年11月29日