【新型コロナ】記入例有り!「雇用調整助成金」申請方法を社労士が詳しく解説!

2020年04月20日
新型コロナ、雇用調整助成金

雇用調整助成金を受給するために必要な手続きの手順は?

企業が行う手続きのおおまかな流れは以下の通りです。

  1. ▼ 雇用調整(休業など)の計画策定
  2. ▼ 雇用調整(休業など)について労使協定を締結
  3. ▼ 「計画届書類一式」を労働局かハロワに提出 ※休業実施後でもOK
  4. ▼ 雇用調整(休業など)を実施
  5. ▼ 休業実績にもとづき、「申請書類一式」を作成し、労働局かハロワに提出
  6. ▼ 労働局にて審査
  7. ▼ 審査に通れば申請額が企業に振り込まれる

※判定基礎期間(賃金締切期間/大半は1カ月)ごとに提出

一般的には、雇用調整の方針を経営陣やマネジメント層が決定し、現場が実行。実際の申請書類の作成や手続きは労務・総務・人事といった勤怠・給料を管理している管理部門が担当することになるのではないでしょうか。

なお、手続きはすべて企業が行います。助成金は全額まとめて企業に振り込まれるため、労働者に直接振り込まれることはありません。ですから、労働者が行う手続きも特にありません。この点は、同じ雇用保険であっても、基本手当(失業手当)や育休手当などとは異なる点です。

\ ココがPOINT /
必要な手続き手順は?
本来は、計画届を休業開始「前」に提出しなければならないが、
コロナ特例により、休業開始「後」の提出が可能に
雇用調整助成金の申請手続き手順

書類の種類、記入例

「計画の届出時」に必要な書類

まず計画の届出時に必要な書類について紹介します。本来は、休業実施前に提出するものですが、コロナ特例では事後(ただし支給申請前、かつ6月30日まで)の提出でもOKと緩和されました。

以下の「様式」とあるものは厚労省が作成した決まったフォーマットに書くもの。「様式」とないものはフォーマットは何でもよく、指定された事実の確認できるものであれば問題ありません。

計画の届出時に必要な書類

代表的な書類について、以下で記載例と注意点を紹介します。

(1)休業等実施計画(変更)届

あくまで計画届なので、「この日程で、この人数の休業(教育訓練)を実施します」という予定を書きます。計画届を休業実施後に提出する場合は、実際に実施した内容を記載すればOKです。

休業等実施計画(変更)届
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(2)雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書

助成金を受給するには、生産量や売上高などの事業活動を示す指標が、1カ月で5%以上低下している必要があります。「事業活動の状況に関する申出書」は、5%以上低下していることを証明する数字を記載するものです。

具体的には、A欄に経営悪化「後」の1カ月の生産指標(生産量や売上高など)を記載、B欄に経営悪化「前」の1カ月(対前年同月が原則)の生産指標を記載します。C欄に生産指標が何パーセントまで下落したかを記載すればOKです。この値が95%以下であれば条件を満たします。

たとえば、コロナ前に売上が単月1000万円だったところ、コロナにより単月500万円まで下落した場合は、A欄に500万円、B欄に1000万円、C欄に「500万円÷1000万円×100」で「50」と記載します。コロナの影響で、売上が50%まで下落したということです。

雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
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(3)休業協定書 ※様式なし

「休業協定書」とは、労使で合意して休業を実施していることを証明する協定書です。「36協定」を締結している企業が大半だと思いますが、考え方は36協定と同じです。労働者代表との合意のもと署名・捺印をします。様式は問われません。ゼロから作成するのではなく雛形をアレンジするとスムーズです。雛形は検索すればたくさん出てきます。

「申請時」に必要な書類

次に助成金申請時に必要な書類について紹介します。ざっくりと「いくらの助成金の支給を申請するのか」と「その根拠となる数字を証明する書類」が必要です。

「申請時」に必要な書類

代表的な書類について、以下で記載例と注意点を紹介します。紹介する順番で作成するとスムーズです。

(1)休業・教育訓練 実績一覧表

これは、一人ひとりの休業実績(教育訓練実績)を一覧化したものです。ひとりにつき1行で記載します。


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記載する際の注意点として、まず上部にある「判定基礎期間」とは、賃金締切期間のことで、賃金締切日の翌日から次の賃金締切日を指します。たとえば、末〆であれば、「1日から末日」までとします。

③の「月間所定労働日数」は、その名の通り、月の平均所定労働日数を記載します。フルタイムなら月22日前後ではないでしょうか。アルバイトやパートタイマーならもう少し少ない数字になるでしょう。

④⑤⑥には、判定基礎期間中に「全日休業」「短時間休業」「教育訓練」した日数・時間の合計を記載します。全日休業と短時間休業の違いは、言葉の通りですが、まるまる1日を休みとしたのか、それとも、1日のうち数時間を休みとしたのかの違いです。「短時間休業」の欄だけ、単位が「時間」になっているので注意が必要です。

この実績一覧表で出した合計の数字は、次の「助成額算定書」に転記します。転記の仕方は様式内に指示があるので、指示に従えばOKです。

(2)雇用調整助成金 助成額算定書

次の書類です。その名の通りですが、これは助成額を計算するための書類です。

計算方法は以下の通りです。まず「前年度1年間の雇用保険の保険料算定基礎となる賃金総額」を調べます。これは、雇用保険加入企業なら必ず作成している、前年度の「確定保険料申告書」の同項目から転記すればOKです。社内の雇用保険被保険者に払った賃金をすべて合算したもの(前年度実績)です。

次に、「前年度1年間の1カ月平均の雇用保険被保険者数」を計算します。各月月末の被保険者数を合計し、12で割ればOKです。被保険者数の増減を平均するということですね。また、「前年度の年間所定労働日数」も必要です。休日出勤分を含まない所定労働日数を記載します。部署によって日数が異なる場合は平均を出します。

これらの数字をもとに、事業場(企業)全体の平均賃金(日額)を計算します。計算式はシンプルで、その事業場が労働者に支払った「賃金総額」を、「1カ月平均被保険者数×年間所定労働日数」で割ります。自動計算機能付きのExcel様式では、この部分は自動的に計算され、平均賃金額(日額)が出ます。

スッと入ってきづらいですが、ごくごくシンプルな例で表現してみます。「前年度、3人の労働者に年間400万円ずつ支払いました。3人の年間労働日数は250日でした」というケースです。ここから3人の1日の平均賃金を計算する計算式は、400万×3人分(賃金総額)÷(3人×250日)=3人の平均賃金(日額)が算出できると、こう考えます。

ここまでが、「算定書」の(1)~(4)です。
雇用調整助成金 助成額算定書
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あとは、(5)の実際に支払った休業手当の支払い率(労基法により60%以上必須/複数ある場合は低い方)を記入し、算定書にある通りの計算式で計算します。

(7)の緑背景部分の助成率は、コロナ特例の助成率を選択します。先述の通り、中小企業4/5、大企業2/3(解雇等を一切行わないなら、中小企業9/10、大企業3/4)です。(7)で出た額が、8,330円を超える場合は、8330円とします。この額を超えて申請することはできません。(自動計算機能付きのExcel様式上では、上限額を超えない設定になっています)

(8)の「月間休業等延日数」は、先に作成した「実績一覧表」から指示のある通りに転記します。あとは、自動計算機能付きのExcel様式であれば、自動で「助成額」まで計算してくれます。

このように、ざっくりとした1日の平均賃金をもとに概算の休業手当額を出し、それに助成率をかけて計算するので、実際に支払った「休業手当総額」と「助成額」とは乖離があります。しかし、一人ひとり計算するとなると、あまりにも煩雑になりますし手に負えません。ですので、このような計算方法が採用されています。

(3)雇用調整助成金(休業等)支給申請書

最後は、「支給申請書」です。「算定書」で計算した数字を転記する部分がほとんどなので、この書類が一番簡単かもしれません。

「②休業等の規模」欄が分かりづらいですが、所定労働日数に対し、休業日数が(中小)1/40、(大企業)1/30以上の条件を満たしていることを証明するという意味合いです。(4)の「月間所定労働延日数」の部分は、対象労働者の「所定」労働日数を合算したものを記載します。

最後に、振込先の口座番号を間違いなく書けば完了です。

雇用調整助成金(休業等)支給申請書
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提出先と提出方法、提出期限

提出先は、事業所の所在地を管轄する「都道府県労働局」または「ハローワーク」です。申請するタイミングは、支給対象期間末日の翌日から「2カ月以内」。窓口受付のみか郵送受付も可能かは、各県の労働局かハローワークの案内をご確認ください。東京都労働局は、緊急事態宣言が発動されている現在、「郵送受付」も行っています。

まとめ

ざっくりとした説明は以上です。実際に書類を作成する際は、厚生労働省の雇用調整助成金ページ(こちら)をご確認ください。最新情報や使用する様式などはすべてこのページに掲出されています。可能な限り雇用を守ることが、社会不安の低減につながるはずです。活用できるものは活用し、アフターコロナに備えていければと思います。

※すべての情報は「2020/04/16」現在のもの

ライター:林 和歌子
大学卒業後、人材サービス大手で約12年間勤務。主に企業の採用活動に携わる。採用という入口だけではなく、その後の働き方にも領域を広げたいとの思いで独立。現在、採用支援を手がける傍ら、働き方に関するコンテンツなども執筆しています。京都大学文学部卒業(社会学専攻)。2015年、社会保険労務士の資格取得。
2020年04月20日