育休1年以上?企業がしておくべきこと

 最近、保育園の「落選狙い」横行が話題となりました。
2年前には「保育園落ちた」が国会で読み上げられ、待機児童が深刻な社会問題として広く認識されましたが、この状況であえて落選を狙う目的は何なのでしょうか?

それは、2017年10月の改正で最長2年まで延びた育休の「延長」制度にあります。

 原則の育休期間は出産後56日経過後〜子供が1歳までです。延長制度とは、待機児童の多い地域など、原則の期間中に保育所等に入所できないなどの特別な事情がある場合に、例外的措置として子供が最大2歳になるまで育休を延ばすことができる制度です。延長期間も原則の期間と同様の公的サービスを受けられます。

 この延長の申請には「保留決定通知書」が必要です。これは保育所等に落選すると発行されます。今問題になっている「落選狙い」とは、本来の制度趣旨は「就労継続」であるにも関わらず、ギリギリまで延長したいがために敢えて倍率の高い保育所に申し込み「保留決定通知書」を得ようとすることです。これにより、
・各地域の本来の待機児童数や保育ニーズが不透明になる
・すぐに復職したい人の落選の可能性が高まる、妨げになる
・官民ともに事務負担が増加する
などの問題が浮上し、数十の自治体が厚労省に延長ルールの改変を求めていました。

これに対し、厚労省は2段階の対策案を検討しています。

<1段階>
保育所等へ申込みした時点で、「直ちに復職希望」か「保育を希望するが、申し込んだ園に落選した場合は育休延長等も可」を選択します。後者は減点され、優先順位が下がります。

<2段階>
第一希望の保育所等を内定辞退し、二次調整で落選しても「保留決定通知書」が発行されますが、「第一希望は内定辞退した」旨が記載され、内定辞退にやむを得ない理由があったのかどうかを会社・ハローワークに審査されます。その結果によって延長可否が決定されます。つまり、「保留決定通知書」を提出したからといって必ず延長できるわけではなくなります。

参考:内閣府 第85回 提案募集検討専門部会 議事次第・配布資料
※厚労省の対策案に関しては今後の動向を必ず確認してください。

 あくまで予想ですが、「保留決定通知書」は今より取得しやすくなるのではないでしょうか。一方で平成29年度版男女共同参画白書によると、平成3年に育児休業法が成立してから現在に到るまで育休取得後の就業継続者の割合がどんどん増え、妊娠時に就業していた人の半数以上が出産後に職場へ戻ってきています。

以上のことから、延長後に復職する人が増えると考えられ、企業(特に待機児童の多い地域)は育休を1年未満と見積もるのは早計と思われます。

 本人の意思に関わらず、育休取得者が1年以上職場に帰ってこない可能性があるとして、人員計画を立てるべきと考えます。それに合わせ、乳幼児を持つ社員が戻って来やすい制度を検討していただきたいと思います。制度面とは別に、1年以上社員が抜けても支障をきたさないための業務の平準化を図ることも重要です。

 弊社でも条件を設けた上で在宅勤務を認めています。
子供の発熱など、通常であれば休まなければならない不意の事態にも、在宅勤務が認められていれば業務への影響を最小限にできます。最近だと都がテレワークを推進しているので、機器の導入に「テレワーク活用・働く女性応援助成金(テレワーク活用推進コース)」を検討されるといいかもしれません。話は逸れますが、テレワークや働き方改革など、国地・方自治体の推進事項を始める場合、設備投資の前に該当する補助金や助成金がないかチェックされるといいです。

 現在、3歳に満たない子を養育する労働者が短時間勤務制度の申出をした場合、企業には応じる義務がありますが、始業時刻変更措置は努力義務です。特に都市圏就業者の通勤事情は非常に重要です。単に朝早くから行動すればいいというわけではなく、保育園によっては学年ごとに登園時間が指定されている場合もあります。

 企業のIT化、業務効率化は加速度的に進んでおり、これからもスピードを増すことでしょう。これは、経産省が、比較的受給しやすいIT導入補助金制度を実施していることからも言えます。育休制度がスタートした平成初期と現在では、ビジネス上の2年の重み・情報量は大きく異なるものでしょう。伝え方には配慮が必須ですが、ブランクが職場復帰後の自分を苦しめるものにならないか、一度本人のキャリアプラン構想も踏まえて一緒に考えてもらうと良いでしょう。

 職場から出産でスタッフが抜ける場合、会社がどれだけ配慮しても現場スタッフへの負担分配は避けられません。
最近は晩婚化の影響もあり、周りに隠しながらも不妊治療に取り組む夫婦が増えていますが、企業から配慮ある働きかけがない限り本人から切り出すことが難しいデリケートな悩みだと言えます。また、日本人の半分はガンを発症すると言われる中、定年延長が施行されると、年齢的に「働くガン患者」が増えることでしょう。介護をしながら働く人も増えるはずです。
 現場スタッフが産休・育休者を気持ちよく送り出し、迎えることができるよう、産休・育休だけに主眼をおかず全員が気持ちよくが働ける会社を目指したいものですね。

 育休前は1年以内に復職!と意気込んでいたものの、1歳と言えばちょうど乳離れするか微妙な時期です。計画通りにいくことの方が少ないのではないでしょうか。
・子供の病気、障害
・予定していた家族の協力が得られなくなった、配偶者の転勤
・通勤経路に保育所がなく出勤時間に間に合わないなどの通勤事情、保育所の年度・・・・・
延長狙いが制度趣旨に反することは間違いないのですが、育児事情は千差万別、一概に責められるものではないとも思います。あと数ヶ月あれば、安心して復職でき仕事に集中できるかもしれません。育休も延長もあくまで「就労継続」が目的であることは、育休取得者も企業も忘れたくないですね。
言わずもがなですが、育児状況を把握する意味でも、育休社員とのコミュニケーションは欠かせません。

 出産予定の従業員がいる場合、厚労省の「両立支援等助成金 育児休業等支援コース」を検討されると良いでしょう。「育休復帰支援プラン(*)」を作成し、プランに沿って労働者に育児休業を取得、職場復帰させた中小企業事業主に助成金が支給されます。設備投資への助成が多い中、比較的狙いやすい助成金だと思います。

社内制度の見直し、助成金はぜひ社労士へご相談ください。
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2018/12/10

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